芸術公社設立記念シンポジウム(2015年1月23日開催)

2015年1月23日、SHIBAURA HOUSEにて、芸術公社の設立を記念したシンポジウムを開催した。前半部分は、当法人の代表理事・相馬千秋が「芸術の理念と実践」をプレゼンテーション、ゲストの佐藤直樹氏から「芸術公社のロゴの成り立ち」について、ゴン・ジョジュン氏からは「台南藝術公社」について報告された。後半部分は、芸術公社のディレクター12名が登壇し、専門的立場から「芸」「術」「公」「社」の概念と、今日の芸術と社会についての意見を述べた。


 芸術公社の理念と実践

相馬千秋(以下、相馬) 芸術公社がかかげるミッションは、私たちがいま属する日本という社会と芸術の関係性を更新していくことです。私たちは、社会と芸術の関係について、社会でのコンセンサスがまだ十分に形成されていない現状があると考えています。

芸術公社には、プロデューサー、編集者、批評家、パブリシスト、弁護士など、様々な専門性をもつメンバーが社会と芸術の「繋ぎ手」として集まっています。私たちは互いに協働しあいながら、公共や民間に縛られず、社会と芸術の関係性を問い直し、プロジェクトや言論活動などの発信をしていきたいと思っています。

また将来的には、日本国内にとどまらず、理念を共有するアジア各地の芸術公社と相互に連携・恊働し、「亞洲芸術公社」というゆるやかな共同体が創出されることを目指しています。

本日はゲストとして、芸術公社のロゴをデザインいただいた佐藤直樹さん、台南藝術公社を立ち上げたゴン・ジョジュンさんをお呼びしました。

佐藤直樹 佐藤です。芸術公社のロゴは、芸術公社に含まれる「芸」という文字、その一番深いところから何かが立ち上がってくるといいなというところから描き始めました。白川静先生の本などを読んで勉強し直して、「芸」という文字は、人が土に苗を植えるとか、それを神に捧げることにつながっているとわかりました。象形文字が変化して文字になっていくところをイメージし、議論と試行錯誤を重ねながら、このデザインに落ち着きました。

20世紀のデザインは、マニュアルを作ってそれをはみださないように、という考え方をしていました。世界的企業では今もそうやってロゴを作っています。これは非常に効率はいいんですが、芸術公社の場合は、その状況に応じて変化しくものにしたい。もしかしたらロゴが変わっていく可能性も視野に入れながら、これから対話を重ねていきたいです。

ゴン・ジョジュン こんにちは。台南藝術公社を立ち上げたゴン・ジョジュンです。台南藝術公社の理念は、東京の芸術公社と非常に似ています。主に台南のキュレーター、アーティストが台南藝術公社に参加しています。

我々が重要視しているのは、ソーシャル・エクスチェンジというものです。台南の都市圏で、様々に独立したアート・プラットフォームが、互いに連携して活動できる空間を立ち上げることを重要な目的としています。

また、台南藝術公社はオフィスを借りて新しい空間を作ろうとしています。将来はここに編集室を作り、WEBジャーナルを立ち上げる予定もあり、文化的な活動を共有するスペースとして機能していきたいです。将来的には、台湾だけではなく各国からのアーティストやキュレーターを招聘して活動できればと思っています。


芸術と社会の関係性を更新する

林立騎(以下、林) 林です。ここから進行を務めます。近年、芸術と社会の新たな関係を模索する動きが増えています。しかしそのときに「芸術」の更新ばかりが重視され、「社会」が再考される機会は少ないのが現状です。そもそも「社会」とはなんなのか、「社会」は日本に存在するのでしょうか。最初にご発言いただくのは、芸術公社の監事である弁護士の須田洋平さんです。

須田洋平 私は普段から人権問題や環境問題、労働問題を取り扱っており、表現の自由に関わる案件にも携わっています。

社会が持つ課題のうち、国や社会を構成する人口のマジョリティが認識している課題に目が行きがちですが、マイノリティの人だけが認識している課題も存在します。しかし、マイノリティだけが認識する課題をテーマに表現活動をすると、政府や強い立場にいる人にとって快くない表現が出てくることがあります。その結果、政府や強い立場の人によって表現の機会を奪われることがあります。私たちの存立する「社会」が弱いと、こうした表現活動に対する制限に対し、異議申立てをする力が弱くなり、自由な表現活動が難しくなります。

社会が持つ課題を芸術によって解決するには、「社会」がしっかりと存在していることが前提です。我が国の「社会」は、いまだに心もとない状態です。なにか問題が起こっても社会が弱いということで、とかく政府、「公」の一部分に問題解決を頼りがちです。我が国では、芸術による課題解決機能を問う以前に、「社会」を創造する、構築する機能を芸術に期待してみてもよいのではないでしょうか。

芸術における表現活動は、古代ギリシアの時代から、人々に対して思想を伝える優れた手段であり、民主主義を支えるものと考えられてきました。芸術公社では、表現の自由が民主主義を支える根幹であるという考えのもと、社会を構築するという視点を持ち、社会とは何かという問いを提起したいと思っています。さらに、芸術公社ではマイノリティだけが認識している課題を扱う芸術を積極的に取り上げていきたいです。