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中村佑子『サスペンデッド』

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作品紹介

映画監督・作家の中村佑子。『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』をはじめ、繊細な揺らぎを触覚的に掴み取る独自の映像世界で高い評価を得てきた。一方、文芸誌『すばる』(集英社)での長期連載を経て出版された単著『マザリング 現代の母なる場所』では、同時代の女性たちへのインタビュー、過去の女性たちが綴った文学・哲学テキストの引用を縦糸に、自身の少女時代や母親との関係や記憶を横糸に、「母なる場所」をめぐる壮大な哲学的エッセイを編み上げ、新たな女性文学の最前線を切り拓いている。
今回、シアターコモンズからの委嘱を受け、「病の親を持つ子どもたち」をテーマとした初のAR映像作品の創作に取り組む。中村は「病気の親がいると、家のなかに病や死の予兆がある。その予兆のなかで世界を感じると、高い解像度をもって世界の像が子どもに迫ってくる」と語る。観客は、かつてある家族が住んでいたであろう家を一人ひとり訪ね、ある子どもの視点から二重化された世界を体験する。
誰しも心身の不安を抱えながら歩まざるを得ないコロナ時代。死が隣接した宙吊りの「生」の感覚に触れることで、言葉にできない痛みや感覚をいかに癒し合うことができるだろうか。

アーティスト

中村佑子(なかむら・ゆうこ)

1977年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。哲学書房にて編集者を経て、テレビマンユニオン参加。美術や建築、哲学を題材としながら、現実世界のもう一枚深い皮層に潜るようなナラティブのドキュメンタリーを多く手がける。映画作品に『はじまりの記憶 杉本博司』、『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(HOTDOCS正式招待作品)、テレビ演出作にWOWOW「はじまりの記憶 現代美術作家 杉本博司」(国際エミー賞・アート部門ファイナルノミニー)、NHK「幻の東京計画 首都にありえた3つの夢」(ギャラクシー奨励賞受賞)、NHK「建築は知っている ランドマークから見た戦後70年」などがある。シアターコモンズ’19ではスーザン・ソンタグの『アリス・イン・ベッド』のリーディングを演出。文芸誌『すばる』での長期連載を経て、2020年12月に初の単著『マザリング 現代の母なる場所』を出版。

作品クレジット

監督・脚本|中村佑子                                  

出演|宮下今日子、ソニア、宗雲凜音
撮影|佐々木靖之
撮影助手|上野陸生
音響|黄 永昌
照明|後閑健太
美術|出井奈保
衣装|臼井梨恵
ヘアメイク|くどうあき
助監督|佐藤 駿
VR制作|株式会社A440
協力|加藤枝里、夏苅郁子、久永隆一
会場協力|ゲーテ・インスティトゥート東京                        

製作|シアターコモンズ 、株式会社A440  

上演記録 

シアターコモンズ ’21

2021年2月11日~28日

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